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最終更新:2026年04月11日
ECサイト制作「何で作るか」で悩む前に
滋賀県内で、これからネットショップを始めようとしている事業者様から『ShopifyとBASE、どっちがいいの?』という相談をよく受けます。
Shopify、BASE、STORES、カラーミーショップ……。
いま、ネットショップをつくるための道具は、驚くほどたくさんありますよね。
「どれが一番売れるんだろう?」
「自分にはどれが合ってるんだろう?」
そうやって画面を眺めて迷ってしまうのは、当然のことです。
もちろん、選ぶ道具によって「できること」や「かかるお金」は違います。
目的や予算に合わせて、最適なものを選ぶ。それはとても大切なことです。
でも、その前に。
ちょっとだけ立ち止まって、考えてみてほしいことがあります。
それは「システム」の話ではなく、あなたの「商売」の話です。
道具を決めるのは、じつは「何を、誰に、どう届けたいか」が見えてからでも、けっして遅くはありません。
システムを決めるのは、いちばん最後でいい

「Shopifyがいいらしい」「BASEなら簡単そうだ」 そんなふうに、まずは「道具」から探したくなる気持ちはよくわかります。
でも、システム選びに、自分たちの商売を引っ張られてはいけない。 これが、私が一番お伝えしたいことです。
先に道具を決めてしまうと、いつの間にか「そのシステムでできること」の範囲内でしか、商売の形を考えられなくなってしまいます。それは、とてももったいないことです。
まずはシステムの話を脇に置いて、以下の「お店の輪郭」をはっきりさせることからはじめましょう。
「誰に、どう届けるか」の解像度を上げる
ここが固まっていないと、どんなに高機能なシステムを使っても、誰の心にも刺さらないお店になってしまいます。
- どんな人が、どんなシーンで買うのか?
- サイトを訪れたとき、どんな「印象」を持ってほしいのか?
- 商品が届いたとき、どんな「気持ち」になってほしいのか?
ただ売るだけでなく、買ったあとの「体験」まで想像してみる。
自分たちの「現在地」を客観的に見てみる
少し専門的な話になりますが、以下の視点で整理すると、迷いがなくなります。例えば、滋賀の伝統工芸である「信楽焼」を扱うお店を例に考えてみましょう。
3C分析
「市場(お客さん)」「競合(ライバル)」「自社(自分たちの強み)」の3つを並べて、自分たちだけの「選ばれる理由」を見つけます。
- 市場(Customer)
「家での食事時間を大切にしたい」「作家の体温が伝わる器で暮らしを彩りたい」と願う都市部の層。 - 競合(Competitor)
安価な量産型の食器や、大規模なインテリアショップの既製品。 - 自社(Company)
若手作家による、現代のマンションの食卓にも馴染む「モダンで軽やかな信楽焼」という独自のラインナップ。
- STP分析
誰をターゲットにし、どんな立ち位置で勝負するかを明確にする。
ターゲット(Targeting)
インテリアにこだわりがあり、SNSなどで自分の好きな世界観を探している30〜40代。 - ポジション(Positioning)
伝統的な「重厚な信楽焼」ではなく、日常使いしやすく、かつ贈り物としても喜ばれる「現代の工芸品」という立ち位置。
「必要な機能」と「理想の雰囲気」を書き出す
「お店の輪郭」が見えてくれば、必要なものは自然と決まります。
- 機能
ギフト対応は必須か? 定期購入は必要か? SNSとの連携は? - 雰囲気
洗練された美しさか、温かみのある手触り感か。
「システムに合わせて商売を変える」のではなく、「自分たちの商売にシステムを合わせる」。
この順番を守ることで、長く愛される、地に足のついたお店ができあがります。
流行り廃りに振り回されない、「自分たちのお店」をもつメリット

モール(百貨店)に出店すれば、たしかに最初は楽かもしれません。でも、長く商売を続けていくことを考えたとき、自社サイトという「自分の店舗」を持つことには、数字以上の価値があります。
「物語」を100%の純度で伝えられる
モールの中では、どうしても「スペック」や「価格」が主役になりがちです。隣のページには似たような商品が並び、常に比較され続けてしまいます。 自社サイトなら、あなたの商売に流れる「時間」や「想い」を、邪魔されることなく伝えることができます。
例えば:近江茶の茶舗の場合
モールでは「朝宮茶 100g 1,000円」という数値で比較されてしまいますが、自社サイトなら、霧深い信楽の茶畑の風景や、代々受け継がれてきた焙煎の火入れのこだわりを、大きな写真と静かな言葉で伝えることができます。隣のページに別の安いお茶が並ぶこともありません。
お客様と「直接」つながる資産になる
モールでの買い物は、極端に言えば「Amazonで買った」「楽天で買った」という記憶になり、お店の名前は忘れられてしまいがちです。 自社サイトは、「あなたから買った」という体験を作ります。
- 誰が、いつ、何を買ってくれたのか。
- そのお客様に、どんな感謝の言葉を届けるか。 これらのデータや関係性は、誰にも奪われない、あなたの商売の一生モノの資産になります。
例えば:琵琶湖真珠のジュエリー店の場合
誰が、いつ、大切な記念日のためにその真珠を選んでくれたのか。自社サイトならその記録があなたの元に残ります。数年後、メンテナンスの時期に合わせて「その後、真珠の輝きはいかがですか?」と、琵琶湖のほとりから手紙を書くような関係性を築くことができます。
手数料が少なく、健全な経営
モールに出店すると、売上の10〜15%以上が手数料として引かれることも珍しくありません。 自社サイト(SaaS型など)であれば、決済手数料は数%(3.5〜6%程度)に抑えられます。この数%の差は、長期的に見れば、「新しい商品を作るための資金」や「お客様への還元」に回せる大きな原資になります。
例えば:滋賀の地酒を扱う酒蔵の場合
自社サイトなら決済手数料を数%に抑えられます。モールに払うはずだった10%以上の差額があれば、その分で梱包資材をより上質な地元の和紙に変えたり、季節限定の酒粕をプレゼントとして同梱したり、次の「おいしいお酒」を醸すための投資に回すことができるのです。
「価格競争」という出口のないレースから降りられる
自社サイトの最大のメリットは、「世界観で選んでもらえる」ようになることです。 「安いから買う」のではなく、「あなたが好きだから、ここで買う」というファンを増やすこと。自社サイトを丁寧に育てることは、価格の叩き合いから一歩抜け出し、自分たちの価値を正当に守るための、唯一の道だと言えます。
主要な4つのシステム、それぞれの強みと「できること」
ネットショップの道具選びで大切なのは、今の売上だけでなく「3年後、どんな店になっていたいか」を想像することです。2026年現在の最新状況を踏まえて整理しました。

① Shopify(ショッピファイ)
世界標準の、頼れる本格派。ブランドを「育てる」ならこれ。
特徴
カナダ発、世界シェアNo.1のシステムです。最大の特徴は「拡張性」にあります。「アプリ」と呼ばれる追加機能を組み合わせることで、定期購入や海外販売、複雑なポイント制度など、やりたいことをほぼすべて実現できます。
こんなあなたにおすすめ
- 3年、5年と腰を据えてブランドを大きく育てていきたい方。
- 1ピクセルまでこだわった「独自のブランドイメージ」を表現したい方。
- 将来的に海外への販売(越境EC)も視野に入れている方。
サブスク費用感
ベーシックプラン
月額 約3,650円〜(年払い時)。売上が伸びてきたら、手数料が安くなる上位プラン(月額 約10,100円〜)へ移行できます。
※価格は2026年4月時点のものです
使いやすさ
管理画面は非常に美しく整理されています。多機能ゆえに最初は少し学習が必要ですが、慣れてしまえば「商売のデータ」を分析するツールとして、これほど強力なものはありません。
BASE(ベイス)
「まずは明日から、自分の店を持ってみたい」という方の強い味方。
日本で最も手軽にネットショップを始められるサービスです。最大の特徴は「月額0円」でリスクなく始められること。Instagramとの連携も非常にスムーズで、スマホひとつで商売が完結する気軽さがあります。
こんなあなたにおすすめ
- 初期費用や月額固定費をかけずに、まずはスモールスタートしたい方。
- InstagramなどのSNSでの発信がメインで、そこから直接買ってもらいたい方。
- 複雑な機能よりも「まずは並べて、売ってみる」スピードを重視する方。
サブスク費用感
スタンダードプラン
月額 0円。
売上が月額50万円を超えてきたら、月額約1.6万円の「グロースプラン」に切り替えるのがお得です。
※価格は2026年4月時点のものです
使いやすさ
圧倒的に簡単です。パソコンの専門知識がなくても、直感的に商品を登録し、デザインを選ぶことができます。
STORES(ストアーズ)
BASEとよく比較されますが、より「クリーンで静かなデザイン」が特徴です。また、実店舗のレジシステム(POSレジ)との在庫連携が非常に強力で、リアルなお店とネットショップをひとつの「在庫」として管理できます。
こんなあなたにおすすめ(おすすめ)
- 派手な装飾よりも、商品の良さが引き立つシンプルなデザインを好む方。
- 実店舗を持っていて、お店とネットの両方で在庫を共有したい方。
- 管理画面の使い心地など「日々の運用のストレス」を減らしたい方。
サブスク費用感
スタンダードプラン
月額 3,300円(税込・年契約時)。
月額0円のフリープランもありますが、本格的に運用するなら手数料が安くなるスタンダードプランが主流です。
※価格は2026年4月時点のものです
使いやすさ
UI(操作画面)が非常に美しく、マニュアルを読まなくても操作できるほど親切な設計です。
カラーミーショップ
日本の商売を知り尽くした、老舗の安心感。
特徴
国内最大級の歴史を持つ老舗サービスです。最大の特徴は、日本独特の「熨斗(のし)」や、細かい配送指定など、国内向けの機能が標準で充実していること。歴史がある分、カスタマイズの自由度も高いのが特徴です。
こんなあなたにおすすめ
- お歳暮やお中元など、贈答品(ギフト)需要が多い商売をされている方。
- 電話でのサポートなど、日本国内の安心できる窓口を重視したい方。
- 長年の実績があるシステムで、じっくり国内市場を狙いたい方。
サブスク費用感
レギュラープラン
月額 4,950円(税込)。
初期費用として別途 3,300円が必要です。
※価格は2026年4月時点のものです
使いやすさ
設定項目が多いため、最初は少し「難しそう」と感じるかもしれません。でも、日本の商習慣に慣れている方なら、痒いところに手が届く設定の多さに安心するはずです。
自社サーバー型の「見えないリスク」
最後に、一つだけプロとしてお伝えしておかなければならないことがあります。
WordPress(WooCommerce)やEC-CUBEなど、自分のサーバーにシステムを設置して使うタイプは、一見「自由で安上がり」に見えます。しかし、「お客様の個人情報を自分の手元で預かる」という責任は、個人で背負うにはあまりにも重いものです。
セキュリティの危険性
常に最新の状態にアップデートし続けなければ、情報の漏洩や改ざんの標的になりやすい。
データの管理責任
万が一、顧客情報が流出した際、そのすべての責任(賠償や対応)は店主であるあなたが負うことになります。
ShopifyやBASEのような「SaaS型」は、こうしたセキュリティ対策を24時間体制でプロが管理してくれています。
「商売に集中するために、リスクはプロに任せる」。 これは、あなたが長く、楽しく商売を続けていくための、とても大切な守り方です。
リスクを抑えて、こだわりも叶える。「ボタン埋め込み」という第3の選択肢
「今のホームページのデザインは変えたくない」「でも、セキュリティのリスクは怖い」 そんな方に知ってほしいのが、ASP型サービス(ShopifyやBASEなど)の「カート機能だけを借りる」という方法です。
これは、自分のサイトの中に、ASP側が用意した「購入ボタン」をペタッと貼り付ける仕組みです。
どこでもカラーミー(カラーミーショップ)
すでにあるサイトやブログに、タグを一行貼るだけで「カートに入れる」ボタンを設置できます。商品の説明は自分のサイトでこだわり抜き、決済だけをプロの堅牢なシステムに任せることができます。
Shopify「購入ボタン(Buy Button)」
Shopifyの強力な決済システムを、外部のサイトに埋め込む機能です。ボタンの色や形をカスタマイズして、サイトのデザインに馴染ませることが可能です。世界最高水準のセキュリティを、自分のサイトにそのまま導入できるのが最大の魅力です。
BASE「ショッピングカート」
BASEで作った商品を、外部のサイトにボタンひとつで表示させることができます。スモールスタートしたいけれど、デザインの自由度も捨てがたい……という個人の店主さんにぴったりの選択肢です。
「モール型」という選択肢も、一度立ち止まって考えてみる

自社サイトが「路面店」なら、モール型は「百貨店」や「巨大なショッピングセンター」の中に店を出すようなものです。それぞれの特徴を知ることで、自分たちの商売に本当に必要な場所が見えてきます。
モールの代表格:Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング
第4章では、これまでお話ししてきた「自社サイト(本店)」とはまた別の選択肢、「モール型」について触れておきましょう。
ネットショップをはじめる際、Amazonや楽天市場といった「ショッピングモール」に出店するかどうかは、非常に大きな分岐点になります。
こんなあなたにおすすめ
- 知名度よりも、まずは「数」を売って、早く売上を立てたい方。
- 型番商品や、検索されやすい明確なカテゴリーの商品を扱っている方。
- ポイント還元などを利用して、リピーターを獲得したい方。
サブスク費用感
- 楽天市場: 月額数万円の固定費 + 売上の数%の手数料。
- Amazon: 月額4,900円(大口出品) + 販売手数料(8〜15%程度)。
- 自社サイト(BASEやShopify)に比べると、トータルの手数料は高くなる傾向にあります。
※価格は2026年4月時点のものです
使いやすさ
モールの決まった枠組みの中で出品するため、デザインに迷う必要はありません。その代わり、自分たちの「ブランドらしい雰囲気」を出すことは難しく、どうしても他店との「価格競争」に巻き込まれやすい側面があります。
【比較】自社サイト vs モール型
比較項目 | 自社サイト(Shopify等) | モール型(楽天・Amazon等) |
集客 | 自分で頑張る必要がある | モールが連れてきてくれる |
手数料 | 比較的安い | 比較的高い |
デザイン | 1ピクセルまでこだわれる | 決まった型がある |
顧客情報 | 自分たちの資産になる | モール側の管理になることが多い |
ブランディング | 強い物語を伝えられる | 価格やスペックが優先されやすい |
まとめ:あなたの商売にとって、本当に「ちょうどいい」形を見つけるために
ここまで、システムの比較や自社サイトを持つ意味についてお伝えしてきました。 最後に、ネットショップ制作で迷子にならないための「3つの指針」をまとめます。
「システムの機能」に、商売を合わせない
一番大切なのは、システムの「できる・できない」に、あなたの商売の形を引っ張られないことです。 「このシステムだとこの機能がないから、このサービスは諦めよう」と考えるのではなく、「自分たちがお客様に届けたい体験はこれだから、それが実現できる道具はどれか?」という順番で考えてください。
もし、どうしても理想と機能に乖離があるなら、「今はここまで。売上が伸びたら、次のステップへ」と、商売の成長に合わせて道具を乗り換えていくという柔軟な考え方も必要です。
「作る」のがゴールではなく、「育てる」のが本番
ホームページもECサイトも、公開した日が「誕生日」です。 完成して終わりではなく、そこからお客様の声を聞き、写真を差し替え、文章を整え、少しずつ「お店」として馴染ませていく時間が、何よりのブランディングになります。
最初から100点満点のシステムを求めて予算を使い切るよりも、余裕を持ってスタートし、運用しながら自分たちらしい形に育てていくこと。 その余力を残しておくことが、成功への近道です。
迷ったらご相談からはじめる
Shopifyがいいか、BASEがいいか。その答えは、ネットの比較記事の中ではなく、あなたの頭の中にある「これからの商売のビジョン」の中にしかありません。
「まだ何も決まっていない」「やりたいことが散らかっている」 そんな状態でも構いません。まずは、専門用語を使わずに、あなたの商売への想いをじっくりと言葉にすることからはじめてみてください。
「何で作るか」という技術的な議論の前に、「どんな未来をつくりたいか」を一緒に考えること。 その丁寧な対話の先に、あなたと、そしてあなたのお客様にとって、最も心地よい「お店の形」が見えてくるはずです。
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