滋賀のホームページ制作ブログ

八幡堀の来訪者データと、近江八幡の観光デザイン

最終更新:2026年10月10日

八幡堀の来訪者データと、近江八幡の観光デザイン

こんにちは、湖と月デザインです。

先日、近江八幡を歩いてきました。滋賀を代表する風景のひとつで、名所はどれも素敵でした。ただ、あとから思い返して強く残っていたのは、名所そのものより、町全体がひとつにまとまっている感じです。

この記事は観光地の紹介ではありません。近江八幡という町に流れている「違うものどうしを、否定せずに並べる」美意識を、デザイナーの目で4つにまとめてみました。そして、その4つは私たちがホームページを設計するときに大切にしていることと、ほとんど同じでした。

素材への誠実さ「飾るのではなく、信じる」

江湖庵イメージ

近江八幡での観光は、ランチで入った江湖庵から始まりました。古民家の食事処で、ハンコ職人さんの工房も兼ねている、ちょっと珍しいお店です。

職人の仕事場と食事処。生業が違う2つが、ひとつの古い建物のなかで無理なく同居していました。いま思えば、ここが「共存」という今回のテーマへの入り口だったと思います。

江湖庵イメージ

出てきた料理も、飾り気がありませんでした。驚かせようとする演出はなくて、素材が持っている力を信じて、そのまま出してくれている感じです。土から生まれたものの良さを、そのまま差し出している。そんな印象でした。。

江湖庵料理イメージ

ホームページも、これと同じだと思っています。装飾や派手な演出を重ねる前に、商品やサービス、そこで働く人たちの言葉といった、その会社が本来持っている強みを信じる。それをまっすぐ届ける設計のほうが、結局は確実に伝わります。

体験は、一方通行ではつくれない「見る側と、見られる側の関係」

八幡堀観光イメージ

次に向かったのは、町の象徴の八幡堀です。城の守りとして、そして町へ人や物を運ぶ水路として、人の手でつくられたものです。

八幡堀観光イメージ

堀をゆっくり進む舟を眺めていて、気づきました。印象に残るのは、漕ぎ手さんの背中と、そこに乗っているお客さんの姿です。舟に乗る人は、水の上から町を楽しんでいます。岸を歩く人は、舟のある風景を眺めて情緒を感じています。お互いが相手の風景になっていて、その両方で、ひとつの時間ができあがっていました。

ホームページも同じ構造です。運営する側が見せたいものだけを一方的に並べても、見る人にはなかなか届きません。見る人がどう感じて、どう動くか。そこまで考えて設計して、はじめて心地いい体験になります。

新しさは、古さを否定せず、寄り添う

新町通りの観光イメージ

歩いている途中で雨が降ってきました。濡れた石垣や瓦は色が深くなって、新町通りはいっそう落ち着いた雰囲気になります。

そのなかで目に留まったのが、古民家で営まれている医院の看板です。木枠の中に、透明なアクリル板と黒っぽい文字。建物の質感が透けて見えて、まわりの景色にすっと溶け込んでいました。

近江八幡の観光地看板

通り沿いの商店や飲食店も、新しさや便利さを前に出していません。町の文脈を大事にして店を構えていて、新しいものが古い歴史を消さずに、敬意をもって添えられています。

ホームページのリニューアルでも、この感覚は大切です。流行を取り入れることと、会社が積み重ねてきた個性を失うことは、別の話。私たちは、その会社らしさに新しい形を「添える」ことを大事にしています。小さな要素が静かに重なって、全体として心地よくなる。滋賀らしい美意識だと感じました。

小さく選べる余地が、愛着をつくる

散策の最後に、仁ノ助(じんのすけ)コーヒーに寄りました。

店員さんが丁寧に迎えてくれて、アイスコーヒーと濃厚なチーズケーキを注文しました。ふと棚を見ると、素敵なマグカップがずらり。ホットコーヒーなら、好きなカップを選んで淹れてもらえるそうです。

自分だけの一つを選べる。それだけのことなのに、お店のやさしさがじんわり伝わってきました。

ホームページにも、同じことが言えると思います。作り手の意図で隅々まで固めてしまうより、見る人が自分に合うものを見つけられる、小さな余白を残しておく。そのほうが、記憶に残りやすくなります。

歩いて感じたことを、数字で確かめてみた

ここまでは、近江八幡を歩いて思ったことを書いてきました。ただ、感想だけで終わってしまいます。なので、4つの視点それぞれについて、裏付けになりそうな数字や制度を探してみました。見つかったものを、出典つきで並べていきます。

観光には、いまどれくらいのお金が動いている?

観光庁の2025年の速報によると、日本人の国内旅行消費額は約26兆7,845億円。前の年より6.5%増えていて、2019年と比べると22.1%増です。延べ旅行者数は5億5,313万人(2.4%増)、1回の旅行で使うお金は4万8,424円(3.9%増)でした。

おもしろいのは、人数の伸びより、1人が使う金額の伸びのほうが大きいこと。たくさん来てもらうより、来た人に「ここに来てよかった」と思ってもらうほうが、数字にも出やすくなっているのかもしれません。

指標(2025年)

数値

前年比

国内旅行消費額

約26兆7,845億円

+6.5%(2019年比 +22.1%)

延べ旅行者数

5億5,313万人

+2.4%

1回あたり消費額

4万8,424円

+3.9%

参照:観光庁/トラベルボイス

素材への誠実さ:近江八幡は、最初から「設計された町」

近江八幡の町は、1585年に豊臣秀次が八幡山に城を築いたところから始まります。八幡堀もこのとき一緒に掘られました。道は東西12本、南北4本。碁盤の目のように、ちゃんと計画されています。

1991年4月30日には、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれました。範囲はおよそ13.1ヘクタールで、指定されているのは建物180棟と工作物93件です。

つまり、飾りで人を呼んだ町ではないんですよね。400年以上前の設計が、そのまま今の魅力になっています。「飾るのではなく、信じる」という話は、この町の成り立ちとよく重なります。

参照:近江八幡市/全国伝統的建造物群保存地区協議会/Wikipedia

見る側と見られる側:八幡堀は、埋められそうになった

いまは観光の顔になっている八幡堀ですが、昔は埋め立てる計画が進んでいました。流れが変わったのは1970年代。市民の動きがあって、堀は残ることになりました。当時の青年会議所のスローガンは「堀は埋めた瞬間から後悔が始まる」だったそうです。

船頭さんがいて、乗る人がいて、岸から眺める人がいる。あの風景は、観光客だけでも地元の人だけでもつくれませんでした。「見る側と見られる側」の関係は、町が残った経緯そのものだと思います。

参照:文化庁/草津市の調査報告/コベルコ建機

誰が来ているのか:4人のうち3人は県外から

滋賀県が令和6年度に県内30地点で行った観光統計調査(パラメータ調査)の、八幡堀の結果です。回答は335件(6月80、8月70、11月92、3月93)。居住地はこうなっています。

八幡堀の来訪者の居住地の割合(円グラフ)

居住地

割合

滋賀県

23%

大阪府

17%

愛知県

16%

京都府

9%

兵庫県

7%

三重県

6%

東京都・岐阜県

各4%

静岡県・奈良県

各2%

その他

10%

県内は23%。残りの約77%は県外の方です。335件なので目安として見るべき数字ですが、初めて来る人が主役の場所だということは伝わってきます。ホームページも同じで、初めて見る人が迷わないことが、いちばん大事な仕事です。

同じ調査には、1人あたりの観光消費額(県外交通費を除く)も載っていました。

日帰り客と宿泊客の1人あたり観光消費額の内訳(円グラフ)

区分

日帰り客

宿泊客

飲食費

2,792円

6,413円

土産代

2,180円

4,222円

交通費

1,058円

2,370円

入場料

225円

1,466円

宿泊費

0円

13,916円

その他

67円

91円

合計

6,323円

28,479円

泊まる人は、日帰りの約4.5倍使っています。報告書には、飲食費が高めなのは近江牛のランチ目当ての人がいるから、とも書かれていました。それと、八幡堀だけが目的の人は少なく、まち歩きやラ コリーナへの立ち寄りが目立つそうです。堀は目的地であると同時に、町をめぐる流れの途中にある場所でもあるんですね。

参照:滋賀県|令和6年度 滋賀県観光統計調査報告書(八幡堀は報告書p.21。PDF)

インバウンドは、まだこれから

外国からのお客さまも、近江八幡市の令和6年観光入込客統計で見てみました。

区分(令和6年)

人数

前年(令和5年)

延観光入込客数

4,939,418人

6,444,353人(今年は77%)

うち外国人観光客

28,134人

26,252人(+7.2%)

 外国人の日帰り客

26,408人

24,216人

 外国人の宿泊客

1,726人

2,036人(▲15%)

近江八幡の外国人観光客の割合と日帰り・宿泊の内訳(円グラフ)

人数から計算すると、外国人観光客は全体の約0.6%(28,134÷4,939,418)。その約94%が日帰りで、泊まった人は1,726人です。増えてはいますが、市全体で見るとまだごくわずかです。

国別の割合は、近江八幡市だけのデータが公開されておらず、確認できませんでした。参考までに、滋賀県全体の宿泊旅行統計では、台湾が外国人宿泊者の23.0%で1位という集計があります。ただしこれは県全体・宿泊者のデータなので、近江八幡の来訪者の姿とは分けて考える必要があります。

私たちは、この「少なさ」を弱みというより伸びしろだと見ています。海外の方は日帰りで来て、あまり泊まっていない。知ってもらう入口(ホームページ、地図、多言語の案内)にも、泊まる理由づくりにも余地があります。多言語対応は、翻訳する前に「どこから来る人に、何を伝えたいか」を決めるところからです。

参照:近江八幡市|令和6年観光入込客統計調査(PDF)/近畿運輸局|宿泊旅行統計(2024年確定値)

古さに寄り添う新しさ:新町通りの看板には、ルールがある

新町通りの看板がまちなみに馴染んでいるのは、お店のセンスだけではありません。保存地区で建物の外観を変えるときは、市の許可が必要です。基準は位置、規模、形態、意匠、色彩。近江八幡市の屋外広告物条例も、2020年10月1日に施行されました。

古さを否定しない新しさは、お店一軒一軒の心がけと、町全体のルールの両方で支えられています。ホームページのリニューアルも同じで、自由に変えるだけでなく「ここは変えない」という線を先に決めておくと、らしさが残ります。

参照:近江八幡市|現状変更の許可

海外のデータでも、同じことが言える?

古さを残す価値は、日本だけの話なのか。海外の調査も2つ見てみました。

ひとつは、Booking.comが2025年1月に34の国・地域、32,000人へ行った旅行者調査です(日本も対象に含まれます)。77%が「その土地の文化を代表する本物の体験をしたい」、73%が「旅行で使ったお金が地域に還元されてほしい」と答えています。

Booking.com調査:本物の地域体験を求める77%、地域への還元を望む73%(円グラフ)

もうひとつは、テキサス州の9都市で、歴史地区の指定と住宅価格を調べた研究(Leichenkoら、Urban Studies、2001年)です。指定された地区では、有意に価格が上がった都市が7つあり、上昇幅はおおむね5〜20%でした(ダラス4.9%、フォートワース8.8%、ナコドーチェス20.1%など)。ただ、ラレドとサンマルコスでは有意な差が出ていません。

調査

主な数字

読み取れること

Booking.com(2025年、32,000人)

77%が本物の地域体験を求める/73%が地域への還元を望む

「その土地らしさ」は、旅先を選ぶ理由になりうる

Leichenkoら(2001年、テキサス州9都市)

有意な7都市で価格が約5〜20%上昇(2都市は有意差なし)

古さを残すことが、価値を下げるとは限らない

どちらにも限界はあります。前者は旅行者の「希望」を聞いたもので、実際の行動ではありません。後者はアメリカの住宅価格の話で、日本の観光地にそのまま当てはまるとは言えません。それでも、「本物らしさ」や「古さを残すこと」の価値が日本だけの感覚ではない、という手がかりにはなりました。

参照:Hospitality Net| 2025年調査の紹介/Leichenko, Coulson & Listokin(2001)

見た目は、信頼の入り口

スタンフォード大学のWeb Credibility Projectには、2,684人が参加し、2,440件のコメントが集まりました。サイトの信頼性を判断した理由として「デザイン・見た目」に触れたものは、そのうち46.1%です。

Stanford調査:信頼性判断コメントのうち「デザイン・見た目」が46.1%(円グラフ)

古い調査ですし、数えているのは人数ではなくコメントです。「見た目で信頼が決まる」とまでは言えません。ただ、見た目を気にする人は少なくない、という方向は今も変わらないと思っています。

参照:Stanford Web Credibility Project

デザインの話:町並みも、ホームページも第一印象

近江八幡の町でいちばん印象に残るのは、建物ひとつひとつより「全体のそろい方」です。瓦の色、板壁の質感、軒の高さ、看板の大きさ。それぞれ違っていても、トーンがそろっているから、町がひとつの印象になります。

これは偶然ではありません。さきほどの現状変更の基準は、位置・規模・形態・意匠・色彩という、デザインの基本要素そのものを対象にしています。ホームページで言えば、レイアウト、形、デザイン、色。同じ項目です。

第一印象が決まる速さを調べた研究もあります。Lindgaardらの2006年の研究では、サイトをわずか50ミリ秒(0.05秒)見せただけでも、見た目の魅力の評価は、時間をかけて見たときの評価とよく一致していました。文章を読む前に、印象はほぼ決まっているということです。さきほどの46.1%とも、方向は同じです。

参照:Website Optimization|50ミリ秒の第一印象(Lindgaard et al., 2006の紹介)

町歩きで感じたことをデザインに置き換えると、こうなります。

町並みで感じたこと

ホームページのデザインでは

瓦や壁の色がそろっている

色は少なく絞り、サイト全体で使い方をそろえる

看板が控えめで、建物の邪魔をしない

ボタンや装飾より、写真と文章を主役にする

通りの幅や軒の高さに、リズムがある

余白や文字の大きさに、一定のルールを持つ

新しいお店も、古い町並みに馴染んでいる

既存のロゴや雰囲気を活かして、デザインを重ねる

「おしゃれにする」より、先に「そろえる」。町がいちばんシンプルに教えてくれたのは、これでした。

小さく選べる余地は、本当に効くのか

コーヒー屋さんでマグカップを選ぶ話から、有名な「ジャムの実験」を思い出しました。24種類のジャムを並べると、通りがかりの約60%が足を止めたものの、買ったのは約3%。6種類のときは足を止めたのが約40%で、約30%が買ったという結果です。

ジャムの実験:選択肢の数と足を止めた人・購入した人の割合(円グラフ)

ただ、この実験は再現できるかどうかについて議論があります。「選択肢は少ないほどいい」と言い切れる話ではなく、「多すぎると迷う場面がある」くらいに受け取るのが正確です。マグカップみたいに、選ぶのが楽しい数と範囲に整えておく。それが「小さく選べる余地」だと思っています。

参照:Pratt IXD/再検証論文(arXiv)

数字から見えてきたこと

歩いて感じたこと

裏付けになりそうなもの

ホームページへの置き換え

素材への誠実さ

1585年の城下町設計が、いまも残っている

自社の本当の強みを、そのまま見せる

見る側と見られる側

堀を残した市民の動き/来訪者の約77%が県外

初めて来る人の目線で設計する

古さに寄り添う新しさ

現状変更の許可基準/屋外広告物条例

変えない線を先に決める

小さく選べる余地

ジャムの実験(議論あり)

選択肢は多すぎず、少なすぎず

まとめの前に、あえて数字を並べてみました。感覚で歩いた町が、歴史や制度に支えられていたと分かると、「いい町だな」という気持ちが少し深くなります。

まとめ

仁ノ助(じんのすけ)コーヒーでコーヒーを飲みながら一日を振り返ると、残っていたのは建物や名所より、町のあり方でした。目立たせることも、きれいに整列させることもしない。すべてがお互いを認めて、関わり合って、ひとつの景色をつくっています。

近江八幡から受け取った4つのこと。素材への誠実さ、双方向の体験、寄り添う新しさ、選べる余白。どれも、私たちがホームページをつくるときに大事にしている姿勢と同じでした。数字や制度を調べてみて、その確信も少し強くなっています。

滋賀には、こういう静かな共存が、まだまだ隠れているのかもしれません。また歩いて探してみます。

無料SEO簡易診断ツールWEBサイトカラー抽出&配色ジェネレーター

contact ご相談フォーム

Blog 関連記事

湖と月デザインの制作事例