こんにちは、湖と月デザインです。
琵琶湖のまわりに田んぼが広がり、春には水が張られ、夏には青い稲が風に揺れて、秋には黄金色になる。その同じ土地で、牛たちが、人の手で大切に育てられている。滋賀に暮らしていると、そんな景色が当たり前のようにあります。
当たり前だからこそ、外の人には見えにくい。朝早くから田んぼや牛舎に向かう生産者さんの時間、何年もかけて続けてきた手入れ、「うちの味」にかける想い。そうしたものが、売り場の近くにいる人にしか届いていないとしたら、それはとてももったいない話だと思っています。
そこで頼りになるのがECサイトです。ただ、「ネットで売れる仕組みを用意する」のと、「ちゃんと売れる」のは別の話。この記事では、特産物のECサイトをつくるときに大切なことを、データと、いま実際に動いている滋賀の10サイトを見ながら整理してみました。
数字で見る、特産物をネットで売る時代
食品のEC化率は、まだ4.52%
経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によると、食品・飲料・酒類の市場規模は3兆1,163億円(前年比+6.36%)。物販の中でも、衣類や家電と並ぶ大きなジャンルです。

おもしろいのはEC化率です。物販全体が9.78%なのに対して、食品・飲料・酒類は4.52%。買い物の半分以上がまだお店で行われている、ということになります。裏を返せば、食品はこれから伸びる余地がまだ大きいジャンルです。
近江牛は、約400年の歴史を持つ地理的表示ブランド
近江牛は、2017年12月15日に地理的表示(GI)に登録されました。約400年の生産の歴史があり、日本三大和牛のひとつに数えられています。登録された生産基準には、黒毛和種であること、そして「滋賀県内で最も長く飼育され、かつ最終飼養地であること」が書かれています。
「近江牛」という名前には、ちゃんとした定義があるんですね。この定義は、ECサイトで伝える大事な情報になります。
近江米の産地は、毎年の天候に左右される
滋賀県の水稲(主食用)は、2025年産で作付面積が29,300ha、収穫量が14万8,000トン、作況指数は105でした。一方、2023年産は12万6,900トンまで減っています。2025年は2023年から約2万トン(約17%)増えた計算です。

収穫量は、年によって約20%近く動きます。お米のECで「新米の予約販売」や「年間予約」の仕組みが役立つのは、こういう産地の事情があるからです。
近江牛と近江米は、どう美味しいのか
ECサイトで一番伝えたいのは、結局「食べてどうだったか」だと思います。ただ、味の感想は人それぞれ。ここでは、公的な資料で確認できる「美味しさの理由」を、順番にたどってみます。
近江牛|口の中でほどける脂と、稲わらの育ち
農林水産省の地理的表示(GI)の登録情報では、近江牛の特性として、融点が低い不飽和脂肪酸の「オレイン酸」を多く含み、脂質の口溶けがよいことが挙げられています。脂が口の中でスッととけていく感覚は、こうした性質に裏づけられているわけです。
育て方にも特徴があります。生産地の滋賀県は、琵琶湖の豊かな水に恵まれて稲作が盛んな土地で、近江牛では「稲わらを中心に給餌する肥育技術が発達した」と説明されています。田んぼの恵みが、牛の育ちにつながっている。お米と牛が、同じ土地の中でつながっているのは、滋賀らしい物語です。
そして、約400年という歴史。江戸時代は牛肉を食べることが禁じられていた中で、彦根藩だけは将軍家への献上のために、牛肉の生産が許されていたと伝わっています。昭和26年には、日本初のブランド牛肉の振興団体「近江肉牛協会」も設立されました。長い時間をかけて磨かれてきた味、ということです。
近江米 |「特A」の評価と、暑さに負けない品種
お米の美味しさは、日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」でも確認できます。専門の評価員が、基準米と比べながら「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目を評価し、最高ランクが「特A」です。
令和7年産では、滋賀県の「みずかがみ」が特Aを獲得しました。3年連続、通算8回目の受賞です。さらに、参考品種として初めて出品された「きらみずき」も、初めて特Aに輝きました。
みずかがみは、平成24年度に育成された新品種で、滋賀県は「極良食味かつ、近年の高温でも玄米が白く濁らない」品種と紹介しています。暑い夏が増える中でも、きれいなお米に育つ。つくり手にとっても、食べる人にとっても、うれしい特長です。
参照:日本穀物検定協会|令和7年産 米の食味ランキング(プレスリリース)/滋賀県|みずかがみ
「美味しい」は、事業者さんの言葉で書く
ここまでは、公的な資料で確認できる範囲です。ECサイトでは、それに加えて、事業者さんだけが知っている「美味しさ」を書いていただきたいと思っています。
- 焼いたときの香りや、脂の甘み、噛んだときの食感
- 炊きたての湯気、粒の立ち方、冷めても美味しいか
- いちばん美味しい食べ方と、おすすめの量や焼き加減
- 「うちの牛・うちのお米は、こういうところが違う」という実感
数字や認証は「信頼」を、事業者さんの言葉は「食べてみたい」を生みます。両方がそろったページが、いちばん強いと思います。
特産物をECサイトで売る3つのメリット
1. 商圏を全国に広げられる

総務省の家計消費状況調査(二人以上の世帯、2026年8月)では、ネットショッピングを利用している世帯は54.9%。利用した世帯の支出額は、1世帯あたり月51,110円(前年同月比+2.6%)でした。2世帯に1世帯以上が、ふだんからネットで買い物をしている時代です。
近江牛も近江米も、贈り物やお取り寄せと相性のいい商品です。しかも、八幡堀を訪れる人の約77%は県外の方(滋賀県の観光統計調査)。滋賀に来て、食べて、気に入ってくれた人が、帰ってからも買える。店舗だけでは終わってしまう出会いを、ECサイトがつないでくれます。
食品のEC化率は4.52%で、物販全体の9.78%の半分以下でした。まだ「ネットで買う」習慣が広がりきっていない分、これから選ばれるお店になれる余地があります。
参照:総務省統計局|家計消費状況調査/滋賀県|令和6年度 滋賀県観光統計調査報告書
2. 商品の背景を、じっくり伝えられる
お店では、店員さんが説明できる時間は限られます。ECサイトなら、生産地の風景、生産者さんの想い、育て方や製法、おすすめの食べ方まで載せられます。

食品通販の利用経験者に聞いた調査(おとりよせネット、2025年12月、306名)では、購入のきっかけとして「商品の画像が美味しそうだったから」が70%、「口コミなどが高評価だったから」が43%。見た目と、人の声が、買う理由になっています。また、SNS経由で食品通販を利用したことがある人は64%(前年は54%)で、きっかけになったSNSはInstagramが65%と最多でした。
遠くに住む人にとって、近江牛は「ひとつの商品」ですが、つくり手にとっては、何年もの時間そのものです。その時間を、画面の向こうの人に少しだけ分けてあげる。そうすると、価格だけで比べられない「選ぶ理由」が生まれます。
※この調査は、おとりよせネットの利用者を対象にしたもので、回答者の約77%が女性です。日本全体の傾向とは異なる可能性があります。
参照:おとりよせネット(アイランド株式会社)|お取り寄せに関するアンケート調査(2025年)
3. 好きな時間に、好きな場面で買ってもらえる
同じ調査では、食品通販を使う場面は「家族・友人への贈り物」が62%、「自分へのご褒美」が58%。贈り物のために選ぶ人も、ごほうびのために選ぶ人も、同じくらいいます。
営業時間も、店舗の場所も関係なく、夜に「あの人への贈り物、何にしよう」と探している時間に、お店を開けておける。のしやお届け日の指定、ギフト包装を用意しておけば、贈る人の気持ちに応えられます。
地域の産品をオンラインで選ぶ体験は、すでに身近です。総務省の調査では、ふるさと納税の令和6年度の受入額は約1兆2,728億円でした(前の節でご紹介したとおりです)。
※販売範囲や配送条件は、事業者さんの運営体制によって変わります。
特産物のECサイトで大切にしたいこと
写真が、「食べてみたい」の入口になる
食品は、写真の印象が売れ行きを大きく左右します。おいしそうに見えること、質感が伝わること、贈り物にしたくなること。きれいなサイトをつくるより先に、「食べてみたい」「誰かに贈りたい」と思ってもらえる一枚が必要です。
湖と月デザインでは、撮影込みでホームページ・ECサイトの制作をお受けしています。写真とデザインを別々に考えると、あとで雰囲気が合わなくなりやすいからです。
買い物かごに入れた人の約7割は、買わずに去る
Baymard Instituteが50件の調査をまとめた平均値では、オンラインの買い物かご(カート)の放棄率は70.22%です。かごに入れた10人のうち7人は、買わずに離れます。

では、なぜ離れるのか。理由を見ると、いちばん多いのは「追加費用が高すぎる(送料・税・手数料)」の40%でした。次いで、配送が遅すぎる20%、カード情報を信頼できなかった19%、アカウント作成を求められた18%、チェックアウトが長い・複雑17%、サイトのエラー17%と続きます。

これは米国の調査なので、日本のECにそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「送料が最後に出てくる」「会員登録が必須」「手順が長い」といった、サイトをつくる側で直せることが、離脱の理由の大半を占めていることは見逃せません。
参照:Baymard Institute|Cart Abandonment Rate Statistics
こだわりや背景を、言葉にして伝える
価格や内容量だけでなく、近江牛なら飼育や品質へのこだわり、近江米なら産地や栽培への想い。事業者さんが大切にしていることを、お客さまに伝わる言葉とデザインにします。ここが、「買う理由」になります。
ここで大事にしているのは、立派な言葉を並べることではありません。取材の中でぽろっと出てくる、「この田んぼは、祖父の代から」「雪の年は、牛舎の朝がいちばん冷える」といった、日常の言葉。そういう話のほうが、お客さまの心に残ります。私たちは、まずお話を聞くところから始めます。
食べる人の食卓まで想像する、という視点も欠かせません。贈り物なら、受け取った人がどんな顔をするか。自宅用なら、家族がどんな夜を過ごすか。商品ページは、その場面を思い浮かべてもらうための場所でもあります。
食品ECならではの、設計と運営のポイント
商品に合わせた配送と注文の仕組み
食品は、商品によって必要な仕組みが変わります。
- 冷蔵・冷凍・常温などの配送方法
- 送料と、配送地域の設定
- お届け希望日、ギフト包装、のし
- 予約販売や、季節限定商品の販売
- 在庫管理と注文管理
近江牛は冷凍・冷蔵の温度管理が中心になりますし、近江米は重さがあるので送料の設計や、新米の予約販売が大事になります。商品の特性と、事業者さんの運営のしかたに合わせて、無理なく続けられる仕組みを考える必要があります。
安心して買える情報を、わかりやすく
食品をネットで買うとき、お客さまは「どんな商品が届くのか」「いつ届くのか」を気にしています。商品情報、配送条件、返品・キャンセルの条件、事業者情報は、探さなくても見つかる場所に置きます。通信販売には特定商取引法に基づく表示が必要で、食品には食品表示のルールもあります。取り扱う商品や販売方法によって確認すべきことが変わるので、公開前に必ずチェックしておきましょう。
滋賀の特産物ECサイト10選|いま、どう見せているのか
ここからは、滋賀の特産物を扱っているECサイトを10件、実際に見てみました。ランキングではありません。どのお店も、それぞれの事情と気持ちで、サイトをつくっています。トップページで確認できた内容を、その気持ちが伝わる部分と一緒にまとめました(2026年10月時点。内容は変わる場合があります)。「確認できず」は、トップページから確認できなかったという意味で、実際にその機能がないという意味ではありません。
01. 近江牛肉 総本家 肉のあさの(近江八幡市)

明治30年創業。百年を超えて、近江牛とともに歩んできた専門問屋です。近江牛のほか、ハンバーグ、焼豚、お惣菜まで幅広く揃い、夏・冬のギフト企画では送料無料の期間を案内しています。Yahoo!ショッピングの店舗にもつながっています。
おもしろいのは、生ハムづくりのワークショップの参加募集まで載せていること。売るだけでなく、「食べる前の時間」まで楽しんでほしい、という気持ちが伝わってきます。
02. 近江牛の千成亭(彦根市)

贈り物を選ぶ人の気持ちに、寄り添ったサイトです。ギフトの入口は、予算別(5,000円〜12,000円)とシーン別。選べるギフト券は7つの価格帯(4,400円〜33,000円)で、ほとんどの商品がギフト包装・のしに対応と案内されています。「何を贈ろう」と迷う時間を、少し楽にしてくれます。
そして、自社牧場「千成亭ファーム」と契約牧場の紹介、仔牛登記証明書、トレーサビリティのページ。「どんな牛か」を、隠さず見せています。会員ランクとポイント、Amazon Payにも対応。
03. 近江八幡の近江牛 森村商会(近江八幡市)

自社牧場で、一頭ずつ肥育している生産者直営のショップ。通販を始めたのは2021年9月です。お歳暮では桐箱入り、お中元では折箱を用意したこともあるそうで、「贈る人の気持ちを包む」ことを大事にしているのが伝わります。
予算別(5,000円以下〜15,000円以下)に選べ、配送はヤマト運輸のクール便(冷凍)、日時指定は営業日4〜30日以内。決済は代金引換とクレジットカード。メルマガ、LINE、Instagramで、日々の便りを届けています。
04. 肉のげんさん(大津市)

明治35年創業。「自宅用」「ギフト用」「ふるさと納税」「業務用」と、買う人の目的に合わせて入口を分けています。結婚、出産、誕生日、内祝いと、人生の節目で選べる一覧もあり、お祝いの場面に寄り添う姿勢が見えます。
指定牧場53ヶ所、飼育頭数は常時12,000頭、自社牧場、飼料の方針、近江牛グランプリ枝肉共進会での落札・受賞歴まで掲載。発送時の「プロトン凍結」も紹介し、「おいしい状態で届ける」ことへの手間が見えるサイトです。
05. 肉の岡山(栗東市)

精肉店、レストラン「ミートレストランM」、ネット通販がひとつのサイトに。買って帰る人も、その場で食べる人も、同じ場所で迎えるという、まちのお肉屋さんらしいつくりです。レストランはネット予約に対応し、店舗の外には冷凍自動販売機もあります。
決済はAmazon Pay、クレジット(2種類)、代金引換、銀行振込と選択肢が多く、地域別の送料例も載せています。栗東市のふるさと納税の返礼品も扱っています。
06. びわこ近江牛通販(近江八幡市)

食肉卸の直営ならではの、「見せる」誠実さが魅力です。個体識別番号でのトレーサビリティ、近江牛認定証の同封、年間入荷量380t・出荷量370tといった数字まで公開しています。「安心して食べてほしい」という気持ちが、数字になって表れています。
焼肉・BBQ、ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶなどの用途別と部位別で選べ、本州一律送料1,550円、12,000円以上で送料無料と、ルールもはっきり。コラム、レシピ、部位解説、お客様の声があり、会員ランク(購入額に応じて1〜5%のポイント還元)や定期購入のカテゴリも。決済はクレジット、Amazon Pay、PayPayなど。
07. ケイファームオンラインショップ(野洲市)

兄弟2人で、米・麦・大豆をつくる農家のお米のショップ。新米、白米、玄米、無洗米、もち米と、環境こだわり農産物(滋賀県認証)や無農薬米を分けて並べ、みずかがみなど品種も多数あります。
農産物検査の結果(「1等」など)や食味の点数を、新着情報で伝えているのが農家らしいところ。その年の出来を、自分の言葉で報告する。そんな「便り」のような更新が、お米を買う人との距離を縮めます。1回の注文は20kgまでで、転売防止のために大量注文はお断りする場合があるとのこと。2024年11月のリニューアルで、クレジットカード払いも選べるようになりました。
08. しまだファーム(甲賀市)

ECプラットフォームのBASEで運営している、お米と蕎麦と苺の農家さん。特別栽培米と、県の「こだわり農産物」認証を取得していることを、はっきり書いています。
お米はコシヒカリ、ミルキークイーン、みずかがみなど6品種で、玄米30kg・白米27kg、玄米10kg・白米9kgから選べます。精米は4種類。1ヶ月ごと12回、2ヶ月ごと、3ヶ月ごとの年間予約があり、支払いは発送のたびに都度請求。お米が切れる前に届く、という安心を仕組みにしています。
09. たねやグループ 公式オンラインショップ(近江八幡市)

近江八幡を代表する和菓子・洋菓子のたねや。季節の上生菓子や本生羊羹が並び、ラ コリーナ近江八幡とLAGOの施設ページにもつながっています。商品だけでなく、「訪ねたくなる場所」まで一緒に見せているのが特徴です。
日本語・English・中文の3言語に対応していて、今回見たサイトの中で多言語化を確認できたのはここだけでした。店舗受取のページもあります。
10. JAタウン「近江の味彩」(JAグループ滋賀)

JAグループのオンラインモール「JAタウン」の中にある、滋賀の特産物のショップです。近江米、もち、もち麦などを扱い、みずかがみは「滋賀県認証 環境こだわり米」「特A米」として5kg・10kgで並んでいます。県内の農家さんの手でつくられたものが、ひとつの売り場に集まっている。自社サイトではなく、モールに出店するという選び方もあります。(ページを直接開けなかったため、検索結果に表示された商品情報をもとに紹介しています。)
10サイトを並べると
サイト | ギフトの見せ方 | 産地・生産者の見せ方 | 定期・予約 | 決済・その他 |
肉のあさの | 夏冬ギフト企画 | 創業の歩み・目利き | 確認できず | Yahoo!ショッピングと連携 |
千成亭 | 予算別・シーン別・ギフト券7種 | 自社牧場・契約牧場・仔牛登記証明書 | 確認できず | Amazon Pay・会員ランク |
森村商会 | 予算別・桐箱や折箱 | 自社牧場で一頭ずつ肥育 | 確認できず | 代引・カード・LINE |
肉のげんさん | 価格帯別・シーン別・eギフト | 指定牧場53ヶ所・自社牧場・受賞歴 | 確認できず | ふるさと納税・プロトン凍結 |
肉の岡山 | ギフト券 | 枝肉入荷情報・安全への取り組み | 確認できず | Amazon Pay・銀行振込・レストラン併設 |
びわこ近江牛通販 | ギフト専用の姉妹サイト | 個体識別番号・年間入荷量の公開 | 定期購入カテゴリ | PayPay・Amazon Pay・会員ランク |
ケイファーム | 確認できず | 検査結果・食味点数・栽培方法 | 確認できず | 代引・カード・後払い |
しまだファーム | 確認できず | 特別栽培米・県認証 | 年間予約あり | BASE・あと払い |
たねや | 確認できず | 施設・店舗の紹介 | 確認できず | 3言語・店舗受取 |
JAタウン近江の味彩 | 確認できず | 県認証・特A表示 | 確認できず | モール出店 |
10サイトを見て、気づいたこと
ギフトの入口は、「予算」と「シーン」で分けている
近江牛のサイトでは、千成亭、森村商会、肉のげんさんが、予算別でギフトを探せるようにしていました。贈り物は、「何を贈るか」より先に「いくらくらいで」「どんな場面で」を考える人が多いからだと思います。商品名で並べるより、お客さまの探し方に合わせるほうが、迷わず選べます。
「どこの牛か、どこの米か」を見せるところが強い
自社牧場、契約牧場、個体識別番号、指定牧場53ヶ所、年間入荷量380t。農家のお米のサイトでは、検査結果や食味点数、栽培方法。どのサイトも、商品が「どこで、誰が、どうやってつくったか」を数字や証明つきで見せていました。特産物には、この情報がいちばん説得力を持ちます。
送料のルールは、早めに見せるのがよさそう
カゴ落ちの理由の1位は、追加費用(40%)でした。びわこ近江牛通販は、本州一律1,550円・12,000円以上で送料無料と、トップページで分かるようにしています。千成亭の「送料込み商品」の特集も、同じ考え方です。買う前に総額が見えることは、安心につながります。
決済の選択肢が、買いやすさになる
Amazon Payは千成亭、肉の岡山、びわこ近江牛通販の3サイトで確認できました。PayPayに対応しているところもあります。ケイファームは、2024年11月のリニューアルでクレジットカード払いを追加しています。決済の選択肢が多いほど、お客さまは自分の使い慣れた方法で買えます。
定期便は、まだ伸びしろがある
今回見た範囲で、定期購入や年間予約を確認できたのは、びわこ近江牛通販としまだファームの2サイトだけでした。お米は定期との相性がよく、産地の収穫量が年によって動くことを考えても、予約の仕組みは生産者さんにもお客さまにもメリットがあります。
多言語・海外対応は、これから
3言語に対応していたのは、たねやだけでした。近江八幡市の外国人観光客は、令和6年で28,134人。まだ全体の約0.6%ですが、前年から増えています。帰国後に買ってもらえるECは、インバウンドとの相性がいい。ただし、翻訳する前に「どこの国のお客さまに、何を、どう届けるか」を決めておく必要があります(詳しくはこのあとの「海外のお客さまに届ける、という選択肢」で)。
海外のお客さまに届ける、という選択肢
近江牛や近江米は、海外でも通用するブランドです。ただ、国内向けのECサイトにそのまま英語を足せば売れる、という話ではありません。まずは数字と、守るべきルールを整理します。
食品の輸出は、13年連続で過去最高
農林水産省によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円で、前年から12.8%増えました。13年連続の増加で、過去最高です。品目別では、牛肉、緑茶、米なども最高を更新したと報告されています。
2025年1〜6月の速報値では、牛肉の輸出額は約326億円(前年同期比+15.5%)、米は約68億円(+22.6%)でした(援助米を除く)。
越境ECの市場もあります。経済産業省の調査では、中国の消費者が日本の事業者から購入した額は2兆6,372億円(前年比+8.5%)でした。海外のお客さまが、ネットで日本の商品を買うことは、すでに大きな規模になっています。
参照:農林水産省|大臣記者会見概要(2026年2月3日)/農林水産省|農林水産物・食品の輸出実績(2025年1〜6月)/経済産業省|令和6年度 電子商取引に関する市場調査
ただし、牛肉と米は「そのまま送れる」商品ではありません
食品の海外発送は、国ごと、商品ごとにルールが違います。たとえば次のようなものがあります。
- 牛肉:米国向けは、輸出する牛肉を扱う「と畜場」と「食肉処理施設」が、厚生労働省の認定を受けている必要があります。認定後は米国農務省にも通知されます。国ごとに条件が異なるため、輸出したい国の条件を先に確認します。
- 米:中国向けの精米では、植物検疫証明書の提出や、指定された精米工場での精米などが求められます。農林水産省のQ&Aは、玄米は不可、条件を満たさない精米は手荷物・郵送・国際宅配便で送れない、としています(令和3年3月時点の情報)。
- 関税や残留農薬の基準も、輸出先の国で異なります。
つまり、海外販売は「サイトをつくる」前に、「その商品を、その国へ、誰が、どうやって送れるか」を決める必要があります。ここを飛ばして多言語サイトだけつくっても、注文が入ったあとに送れない、という事態になりかねません。
参照:農林水産省|米国向け輸出牛肉の取扱施設の認定/農林水産省|中国向け精米輸出Q&A
海外への届け方は、大きく3つ
届け方 | 向いているもの | 気をつけたいこと |
自社ECを多言語化し、海外へ直接発送する | お菓子や加工品など、海外発送のルールが比較的わかりやすい商品 | 国際送料、関税、配送中の品質、返品対応を自社で設計する |
越境ECのモールやサービスに出店する | まず海外の反応を試したいとき | 手数料や集客のしくみは、サービスごとに確認が必要 |
輸出商社や現地の輸入業者を通す | 牛肉や米など、検疫・認定が必要な商品 | 事業者さんの手元の利益や、ブランドの見せ方は、相手との取り決めで変わる |
牛肉や米のように規制の多い商品は、3番目の「輸出商社を通す」形が現実的な場合が多いと思います(私たちの見立てで、輸出先や商品による)。その場合のECサイトは、売る場所というより、「海外のバイヤーさんや観光客に、ブランドを知ってもらう場所」としての役割が大きくなります。
サイトでやっておきたいこと
- 商品名の英語表記、「Omi Beef」「Omi Rice」の説明、産地の地図
- GI(地理的表示)や、生産者さんのストーリーの英語版
- 送れる国と送れない国、送料、関税の考え方の明記
- 海外からの問い合わせフォーム(英語)
- 通貨表示と、海外のクレジットカードで決済できるかの確認
近江八幡市には、令和6年に外国人観光客が28,134人訪れました。滋賀に来て食べた人が、帰国後に探しに来てくれるサイト。海外向けは、まずそのくらいの距離感で始めるのもよいと思います。
売っているのは、「商品」だけじゃない
ふるさと納税が1兆円を超える規模になったことは、冒頭でお伝えしました。その背景には、「その土地を応援したい」「縁のある場所に何かを届けたい」という気持ちもあると、私たちは見ています(これは数字ではなく、私たちの見立てです)。
特産物は、土地の景色や、つくる人の暮らし、季節の移り変わりまでをまとっています。ECサイトが届けるのは、お肉やお米だけではなく、その向こうにある滋賀の空気のようなもの。そこまで届いたとき、お客さまは「また買いたい」と思ってくれます。
湖と月デザインが考える、特産物のECサイトづくり
特産物のECサイトは、商品を並べるだけの場所ではありません。その商品が生まれた背景や、つくり手のこだわりまで伝えられる場所です。私たちは、次のことを大切にしています。
- 商品そのものの魅力を、まっすぐ伝える
- 生産者さん・事業者さんの想いを、言葉にする
- デザインと使いやすさを、どちらも諦めない
- 撮影から、公開後の運用まで見据える
- 事業者さんの課題と目的に合わせて、仕組みを選ぶ
ECサイトの制作事例としては、大洋珈琲様のECサイトがあります。商品を売るためだけでなく、ブランドのファンを増やすためのサイトを、一緒に考えていきます。
滋賀の特産物の魅力を、ECサイトから届ける
食品のEC化率はまだ4.52%。伸びしろのあるジャンルです。ただ、買い物かごに入れた人の約7割は買わずに去ります。理由の第1位は送料などの追加費用で、サイトのつくり方で直せることがたくさんあります。
実際に動いている滋賀の10サイトを見ても、ギフトの探しやすさ、産地や生産者の見せ方、送料と決済のわかりやすさ、定期便や海外対応の仕組みに、それぞれの工夫がありました。そして、どこにも伸びしろが残っています。
湖のほとりで育った美味しいものと、それを育てる人の毎日。その魅力を必要としている人に届けるために、ECサイトという選択肢があります。近江牛や近江米などの特産物をオンラインで売りたい方、いまのECサイトを見直したい方は、お気軽にご相談ください。

